近年、トレイルランニング界でも「厚底×カーボン」モデルの登場が加速しています。その中でも異彩を放つのが、**Adidas TERREX Agravic Speed Ultra(アグラビック スピード ウルトラ)**です。
今回は、筆者が「神戸トレイル(30km)」で実際にこのシューズを使用したリアルなレビューをお届けします。結論から言うと、このシューズは誰にでもおすすめできるものではありません。むしろ、ビギナーには向かない危険な一足とも言えるでしょう。
Adidas TERREX Agravic Speed Ultra のスペック詳細

モデル名 | TERREX Agravic Speed Ultra(アグラビック スピード ウルトラ) |
ドロップ | 8mm(前足部28mm / かかと36mm) |
プレート構造 | EnergyRods(カーボンロッド) |
ラグパターン | マルチ方向グリップ付きラグ(約3mm) |
フィット性 | 前足部〜中足部はタイト、踵はしっかりホールド |
カラーバリエーション | ホワイト×レッド(画像モデル)他 |
足入れ感はどう?薄く包まれるスピード仕様

最初に感じたのは、履き口の薄さと軽さ。タン部分も極限まで軽量化されており、ロード用のレーシングモデルのような感覚です。

アッパーは非常に薄く、伸縮性は控えめ。足を「包む」というよりは「乗せる」ような感覚。フィット感は良好ですが、足幅が広い方にはややタイトに感じるかもしれません。
厚底の感覚:路面から浮くような接地感

Adidasが誇る「Lightstrike Pro」を贅沢に使った厚底構造。実際に履いてみると、接地感は非常に独特です。ロードの厚底レーシングシューズに慣れている人なら馴染みやすいですが、トレイル用としてはかなり攻めた設計。
特筆すべきは、ソールの「30°」表記。
これはダウンヒル時の角度を意識して設計されており、坂道での加速を意識したモデルであることがわかります。
クッション感は抜群。ただしクセあり

クッション性能は非常に高く、登りではまるでバウンドするような推進力を感じられます。しかしその反面、クッションが効きすぎて着地時のブレが大きいのも事実。トレイル特有の不安定な地形では、脚力が試されます。
かなり不安定。ビギナー向けではない理由

前述の通り、このシューズは非常に攻撃的です。特に問題になるのが「不整地での安定性」。厚底かつ高反発なミッドソール、そして柔らかいアッパー構造が合わさり、横ブレに弱い設計になっています。

足首が弱い人や、地面の状況に敏感なランナーにとっては、転倒のリスクもあり得るシューズです。
カーボンの恩恵は?推進力は本物

このシューズには、Adizeroシリーズでおなじみの**EnergyRods(カーボンロッド)**が内蔵されています。実際に走ると、登りでの推進力が非常に顕著で、ハイペースでのレース展開にフィットします。
ただし、下りではこの反発が逆に扱いづらくなることもあるため、「扱える脚」を持つ上級者向けであると感じました。
登りのサポートは素晴らしいが筋力必須

神戸トレイルでは、登りでのタイムが明確に向上しました。まるでバネのようにポンポン登れる感覚は、Adidasの技術力を如実に示しています。
ただし、クッションや反発に頼りきると後半に失速します。脚全体の安定性と筋力があってこそ活かせる武器だと痛感しました。
結論:ビギナーは履くな。攻めのトレイルレーサーにこそ相応しい
このAdidas TERREX Agravic Speed Ultraは、**走力と技術を持つトレイルランナー向けの「レーシングマシン」**です。ビギナーが何気なく履くと、扱いきれずに怪我をする可能性すらあります。
しかし、脚力と経験を持ち合わせたランナーにとっては、これ以上ない相棒になることは間違いありません。
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